(やる気があるときに随時更新します.)

ヒトが姿勢を維持するためには支持基底面上に質量中心を保持する必要があります.その際,ヒトは主に体性感覚前庭感覚視覚の3つの感覚を利用して姿勢の情報を取得し,制御しています.

※ここに支持基底面とCoMの図を追加する予定

本記事では 体性感覚前庭感覚視覚の情報が姿勢制御にどのように利用されていると考えられているのか紹介します.

体性感覚(筋,腱,皮膚)

体性感覚とは体の内側の状態についての感覚です.例えば,私たちは目をつむっても自分の肘がどのくらい曲がっているのか知覚することができますがこれは体性感覚で筋肉の長さがわかるおかげです.

体性感覚情報は固有感覚 (proprioception),外受容 (exteroception),内受容 (interoception) の3つに分けられます.特に姿勢制御では固有感覚と外受容が重要となります. 固有感覚は自分自身(筋肉や腱の状態)に対する感覚で,外受容は触覚といった外側からの相互作用に対する感覚です.また,内受容は内臓器官の状態や機能に関する感覚です.体性感覚によって,筋長(関節角度を推定することができる)や床面から受ける力をセンシングすることができます.姿勢制御においては特に,体性感覚情報からは特に足部を起点としたローカル座標系での身体角度が得られる考えられています.このとき,床から見た体の角度はわかりますが,床自体が傾いたりしているかどうかは判断できません.

※ここに床の傾きについては知ることができない図を追加する予定

末梢神経はその神経線維の直系の大きさからI群からIV群の神経線維に分けられ,直径が大きい神経線維ほど伝達速度が速いことが知られています.具体的には以下の表のようになっています.また太い神経線維ほど電気抵抗が小さくなるので電気刺激に対する閾値が低くなります.

筋神経神経線維の直径(μm)伝達速度(m/s)髄鞘の有無
I12 – 2072 – 120有髄
II6 – 1236 – 72有髄
III1 – 64 – 36有髄
IV0.2 -1.50.4 – 2.0無髄

固有感覚 (Proprioception)

固有感覚としては,筋紡錘と,ゴルジ腱器官が姿勢制御において重要な役割を果たすと考えられています.

筋紡錘由来の神経線維にはIa群神経線維とII群神経線維の2種類が存在します.筋紡錘内でIa群神経線維は一次感覚神経終末を,II群神経線維は二次感覚神経終末を形成します.一次感覚神経終末と二次感覚神経終末はともに筋の伸張をセンシングしますが,特に一次感覚神経終末は筋長の変化速度に対する感度が高く,わずかな変化に対しても敏感に応答します.つまり,イメージとしてはIa群感覚神経線維は筋長のわずかな変化や変化速度を素早く中枢神経系に伝達しII群神経線維は筋長の変化をIa群神経線維よりも少し遅れて伝達すると考えられます.

ゴルジ腱器官由来の神経線維にはIb群神経線維が存在します.ゴルジ腱器官は筋腱移行部に存在し,筋肉に発生している張力をセンシングします(Crago et al. 1982).

ネコを対象とした実験でI群神経線維(Ia,Ib)をビタミンB6中毒で破壊すると水平摂動に対する筋活動の潜時が破壊前より20 ms遅延することが知られています.これはI群神経線維が姿勢制御の初期において重要な役割を果たしていることを示唆しています.

外受容 (Exteroception)

外受容としては皮膚神経として接触刺激に応答する機械受容器を支配するII群繊維が存在します.足裏の機械受容器は床反力の大きさや向きをセンシングできるので,特に姿勢制御において重要であると考えられています.

前庭感覚

支持面が傾いている場合,関節の角度のみではヒトは自分がどのくらい傾いているのか知ることはできません.この問題は前庭器官の有毛細胞により得られる頭部の加速度情報によって解決することができます.具体的には,加速度情報を得ることで重力のかかる方向がわかり,その方向が鉛直下向きなので現在の頭部の傾きがわかります.

つまり前庭感覚からはグローバル座標系における頭部の傾きが得られると考えられます.

Peterka 2002 では床面の傾きが小さい時(通常時)には体性感覚が前庭感覚よりも重要視され,床面の傾きが2°より大きいときは前庭感覚が体性感覚よりも重要視されることが報告されています.このことはヒトが様々な感覚情報を重みづけして統合し,姿勢制御に活かしていることを反映しています.

視覚

ヒトは視覚からも外部の環境や現在の姿勢に関する情報を得ることができます.

まとめ

これまでの研究からヒト姿勢制御において,体性感覚からローカル座標系における姿勢を,前庭感覚や視覚からグローバル座標系における姿勢を推定していると考えられています.特に,支持面が安定している時には体性感覚情報が,支持面が不安定なときには前庭感覚や視覚が姿勢制御に大きな影響を与えることが分かっています.

参考文献

Kandel, E.R., Schwartz, J.H., Jessell, T.M., Siegelbaum, S.A. and Hudspeth, A.J., 2013. Principles of Neural Science, Fifth Editon. Chapter 22, 35, 41.

Crago, P E, J C Houk, and W Z Rymer. “Sampling of Total Muscle Force by Tendon Organs.” Journal of Neurophysiology 47, no. 6 (June 1, 1982): 1069–83. https://doi.org/10.1152/jn.1982.47.6.1069.

Peterka, R. J. “Sensorimotor Integration in Human Postural Control.” Journal of Neurophysiology 88, no. 3 (September 1, 2002): 1097–1118. https://doi.org/10.1152/jn.2002.88.3.1097.

カテゴリー: サイエンス

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博士後期課程学生 研究中に気づいた事を中心に記事を作成していきます.研究内容は主にヒト運動計測と脳波解析.

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