はじめに
ここ数か月でQBTSやIONQといった量子コンピュータ銘柄の株価が数倍になっています。AIの次は量子コンピュータなのでは(!)、ということで、量子コンピュータ銘柄についてまとめてみました。見つけよう次のNVIDIA1!
- NVIDIAはChatGPTに端を発した第4次AIブームに乗り機械学習用GPUの販売で一気に業績・株価を伸ばしました。 ↩︎
【米国株】量子コンピュータ主要銘柄比較
量子コンピュータを取り扱っている企業は色々ありますが、NYSEとNasdaqに上場している4社(D-Wave Quantum Inc. (QBTS)、IonQ (IONQ)、Rigetti Computing (RGTI)、Quantum Computing Inc. (QUBT))について一覧表を作って比較してみました。
D-Wave Quantum | IonQ | Rigetti Computing | Quantum Computing (QCi) | |
ティッカーシンボル | NYSE: QBTS | NYSE: IONQ | Nasdaq: RGTI | Nasdaq: QUBT |
主な技術方式 | 量子アニーリング | トラップイオン量子コンピュータ | 超伝導量子コンピュータ | ソフトウェア主導(ハードウェア非依存) |
得意分野 | 最適化問題の解決 | 高精度な量子ゲート操作、モジュール型設計 | ハイブリッド量子-古典システム | 量子アルゴリズムの実用化支援 |
主な製品・サービス | Advantage System、Leap Quantum Cloud | Harmony、Aria、Forte(量子プロセッサ) | NOVERA QPU、Aspenシリーズプロセッサ | Qatalystプラットフォーム |
主な顧客 | Volkswagen、Pattison Food Group、DENSO、Toyota、BBVA、NEC、Interpublic Group、Lockheed Martin、Los Alamos National Laboratory (LANL)、University of Southern California等 | Airbus、Hyundai Motors、United States Air Force Research Laboratory (AFRL)、QuantumBasel等 | DARPA (Defense Advanced Research Projects Agency)、United States Department of Energy (DoE)等 | 不明 |
応用分野 | ロジスティクス、機械学習、材料科学 | 量子化学、機械学習、金融、材料科学 | 研究開発、材料科学、最適化問題解決 | 最適化、データ分析、金融モデリング |
市場ターゲット | 商業顧客、研究機関 | 大企業、学術機関、クラウド開発者 | 研究機関、商業顧客 | 中小企業、政府、科学者 |
強み | 実用化に焦点を当てた量子アニーリング方式 | 高精度、モジュール型アーキテクチャによる拡張性 | クラウド型の柔軟な量子コンピューティング環境 | ハードウェアに依存しない柔軟性と使いやすさ |
課題 | アニーリング方式の限界(ゲート型に比べて適用範囲が狭い) | さらなるスケールアップとエコシステム構築 | スケーラブルな量子プロセッサの実現 | 量子ソリューションの市場認知度向上 |
注目点 | 世界初の商業用量子コンピュータ提供企業 | 初期の商業化成功、複数の産業向け応用を開発中 | ハイブリッド量子-古典計算の統合技術 | 実用化重視で量子計算の知識がなくても利用可能 |
各社のより詳細な説明は以下にまとめます。
D-Wave Quantum Inc. (QBTS)
- 技術特性
D-Waveは量子アニーリング方式に特化しており、これにより最適化問題や組合せ問題の効率的な解決を目指しています。この方式は、量子ゲート型コンピュータに比べてハードウェアの実現が容易であり、商業化が進んでいます。ただし、適用範囲は特定の計算課題に限定される点が課題です。 - 主な製品
- Advantage System: 最大5000の量子ビットを持つ高性能量子コンピュータ。
https://www.dwavesys.com/solutions-and-products/systems/
https://dwavejapan.com/system/ - Leap Quantum Cloud: クラウド経由で利用できる量子アニーリング計算サービス。
https://www.dwavesys.com/solutions-and-products/cloud-platform/
https://dwavequantum.com/company/newsroom/press-release/d-wave-introduces-service-level-agreements-for-leap-quantum-cloud-customers-in-production/
- Advantage System: 最大5000の量子ビットを持つ高性能量子コンピュータ。
- 応用分野
- ロジスティクスやルート最適化
- 機械学習のパラメータ最適化
- 新材料設計
- 市場の位置づけ
実用性に優れた量子計算技術を商業利用可能な形で提供しており、主に企業や研究機関をターゲットとしています。
IonQ Inc. (IONQ)
- 技術特性
IonQはトラップイオン技術を活用した量子コンピュータを開発しており、高精度なシステムを提供します。この方式は、他の技術(例: 超伝導量子ビット)に比べて量子ビットのエラー率が低く、安定した動作が可能です。しかし、量子ビット数が増えると相互作用のエラーや不確定性が増大し信頼性の高い量子ゲートを構築することが難しくなり、スケールアップさせる(量子ビット数を増やす)ことが難しいという課題を抱えています。また、絶対零度に近い超低温環境下での操作が必要になるため、装置の小型化も困難です。 - 主な製品
- Harmony: 11量子ビットの初期モデル。2024年9月1日に廃止。
https://ionq.com/quantum-systems/harmony - Aria: 25量子ビットの動的に再構成可能なシステムを備えた、トラップイオン量子コンピュータ。
https://ionq.com/quantum-systems/aria - Forte: IonQで最も高性能な市販のトラップイオン量子コンピュータ。Azure Quantumのプライベートプレビューで使用可能。
https://ionq.com/quantum-systems/forte
- Harmony: 11量子ビットの初期モデル。2024年9月1日に廃止。
- 応用分野
- 量子化学のシミュレーション
- 金融ポートフォリオの最適化
- 材料科学やAI分野でのモデリング
- 戦略的提携
- Microsoft AzureやAmazon Braketなど、主要なクラウドプラットフォームと統合し、アクセス性を向上させています。また、Qubitekkの買収により量子ネットワーキング技術への進出を強化しています HPCwire Quantum Zeitgeist
- 市場の位置づけ
量子技術の商業利用に最も成功している企業の一つであり、幅広い分野での実用化が進んでいます。
Rigetti Computing Inc. (RGTI)
- 技術特性
Rigettiは超伝導量子ビットを使用した量子ゲート方式に基づく量子コンピュータを開発しています。この技術はある程度のスケーラビリティと高速処理に優れており、多くの量子ビットを統合することが比較的容易です。しかし、トラップイオン量子ビットと同様に超低温環境が必要(トラップイオン量子ビット方式よりは緩い)でハードウェア設計に課題があります。また、システムの大規模化するにつれて量子ビット間の相互作用を正確に制御することが難しくなり、エラー率が増加します。 - 主な製品
- NOVERA QPU: 初の商業向け量子処理ユニット。9量子ビットチップには高速な2量子ビット操作を実現するためのターンテーブルカプラーを搭載しており、単一量子ビット操作をテストするための5量子ビットチップも搭載している。
https://www.rigetti.com/novera#order-form - Aspenシリーズ: 高性能な量子プロセッサを搭載し、クラウド経由で利用可能。Aspen-Mシリーズは80量子ビット。
https://www.rigetti.com/what-we-build
- NOVERA QPU: 初の商業向け量子処理ユニット。9量子ビットチップには高速な2量子ビット操作を実現するためのターンテーブルカプラーを搭載しており、単一量子ビット操作をテストするための5量子ビットチップも搭載している。
- 応用分野
- 学術研究(化学反応のシミュレーションなど)
- 工学設計の最適化
- データ解析やAIの高度化
- 市場の位置づけ
クラウド型量子コンピューティングを強みとし、柔軟なハイブリッド計算環境を提供。量子技術のスケーラビリティ向上を目指しています。
Quantum Computing Inc. (QCi) (QUBT)
- 技術特性
QCiは、量子コンピュータそのものではなく、量子アルゴリズムやソフトウェアプラットフォームを中心に事業展開しています。そのため、特定のハードウェアに依存せず、様々な量子デバイスを活用可能です。 - 主な製品
- Qatalystプラットフォーム: 専門知識がなくても量子アルゴリズムを利用可能。古典計算との連携機能も強化。
https://qatalyst.quantumcomputinginc.com/
- Qatalystプラットフォーム: 専門知識がなくても量子アルゴリズムを利用可能。古典計算との連携機能も強化。
- 応用分野
- 中小企業の業務効率化
- 金融データ解析
- 政府機関向けの量子技術導入支援
- 市場の位置づけ
ユーザーフレンドリーなソリューションを提供し、幅広い顧客層にアプローチしています
まとめ
- D-Waveは実用性重視のアニーリング方式で商業顧客をターゲット
- IonQは高精度なトラップイオン技術で幅広い応用分野をカバー
- Rigettiは超伝導技術を活用し、研究機関や商業用途に対応
- QCiは量子ソフトウェアに特化し、技術の普及を推進
おわりに
比較したら色々と違いが見えてきて面白かったですが、まあ、どれが伸びるかはわからんですね(笑)。
投資としては全部買っておくのが正解かも?
実用レベルの量子コンピュータが出てくるのにはまだまだ年単位の時間がかかると思いますが、最近の技術の進歩速度には目を見張るものがあるのでチェックしておいて損はないでしょう。
結構雑に調べたところもあるので(ChatGPTに丸投げしたり)、できる範囲でダブルチェック・加筆修正していますが、間違いあったらごめんなさい!
ここでは挙げませんでしたが、Google、IBM、Microsoft、Nvidia、Intelといった大企業でも量子コンピュータ関連技術の研究開発は進められていますので要チェックです。
以上!
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