蔵元モデルも知らないのと言われたので勉強してみた

サイエンス

最近蔵元モデルも知らないの…と言われてしまったので勉強してまとめてみました.
わかってる風に書いてますが蔵元モデル初心者です…

蔵元モデルは京都大学名誉教授の蔵元由紀先生が提案した同期現象を記述する数理モデルです.

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ウィンフリーのモデル

蔵元モデルは理論生物学者のA.ウィンフリー先生のモデルを解析的に扱いやすくしたものである[1].
なのでウィンフリーのモデルから説明する.
ウィンフリー先生は同じ強度で結合したN個の異なる自然周波数をもつ振動子を考えた際に,結合強度が低い(極端な例では相互に結合がない)状態ではそれぞれの振動子はそれぞれの自然周波数に従って振動するが,その結合強度が特定の値(臨界値\(K_c\))を超えると集団としての振動が発生すると主張した.
このように特定のクリティカルポイントを超えるとふるまいが大きく変化する現象を相転移と呼ぶ.
水(液体)が0度以下で氷(固体)になる現象も相転移と呼ばれる.これは0度がクリティカルポイントになっている.
ウィンフリーのモデルは以下の数式で表現される.

\begin{align}
\dot{\phi} &= \omega_i + Z(\phi_i)I(t), \\
I(t) &= \frac{K}{N}\sum_{j=1}^N V(\phi_j)
\end{align}

このモデルでは\(N\)個の振動子がすべて同じ強度で結合した際の相互作用を考えている.
\(\phi_i\)は\(i\)番目の振動子の位相,\(\omega_i\)は振動子\(i\)の自然周波数,\(Z(\phi_i)I(t)\)は相互作用を表している.
\(I(t)\)は時刻\(t\)にその他のすべての振動子から受ける入力を表している.
\(V(\phi_j)\)は\(j\)番目の振動子の位相に依存した入力で\(I(t)\)はそれらの和に結合強度\(K\)をかけて振動子数\(N\)で割ったものになっている.
このモデルで\(K\)を大きくしていったときに特定の値で振動子の振動がそれぞれの自然周波数から,集団的な同期振動に相転移するというのがウィンフリー先生の主張である.

しかし,このモデルは解析的に扱うことが難しい.そのためウィンフリー先生はシミュレーションによってこのようなモデルで相転移現象が起きることを確かめていた.

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蔵元モデル

蔵元先生はウィンフリーのモデルを修正することで解析的にウィンフリー先生の主張を証明することができる可解モデルがあるのではないかと考えた.そして提案されたのが以下の蔵元モデルである.

\[\dot{\phi} = \omega_i + \frac{K}{N}\sum_{j=1}^N \sin(\phi_j – \phi_i)\]

蔵元モデルでは振動子間の結合が振動子間の位相差に依存した正弦関数で表されている.
これにより,解析的な扱いが可能になる.
\(\sin(\phi_j – \phi_i)\)の部分は基本的には(位相差が\(\pm\pi\)以内のとき)振動子\(j\)の位相\(\phi_j\)が振動子\(i\)の位相\(\phi_i\)より進んでいる(\(\phi_j – \phi_i > 0\))場合正の値になり,遅れている場合(\(\phi_j – \phi_i < 0\))負の値になる.
つまり,振動子間の位相が近くなるような相互作用が働く

振動子間の同期の評価(秩序変数\(r\))

振動子間の同期の指標として,秩序変数というものがある[2].
秩序変数は以下のように定義される.

\begin{align}
r = \left| \frac{1}{N}\sum_{j=1}^N e^{i\phi_j(t)} \right|
\end{align}

この\(r\)が0に近ければ非同期,大きな値になれば同期していることを表す.

感想

知識不足で特に思いつくわけではないが,神経ネットワークの同期現象と何かつながりがあれば面白そう.

特に脳波を生み出すような神経集団の同期・脱同期現象も蔵元モデルのように相転移で説明できれば面白いなと思った.

将来的にはもっと解析的に蔵元モデルを調べてわかっていることまで理解して説明したいが今回は疲れたのでいったんここまで.需要がありそうだったら追記します.

今更ですが僕の記事よりはここが参考になりそう[3].

参考文献

[1] 由紀蔵本. “いわゆる「蔵本モデル」について.” 応用数理 17, no. 2 (2007): 175–77. https://doi.org/10.11540/bjsiam.17.2_175.
[2] 逸人千葉. “一般化スペクトル理論による蔵本予想へのアプローチ.” 数学 69, no. 2 (2017): 181–203. https://doi.org/10.11429/sugaku.0692181.
[3] 蔵元予想とは何か? ~予想紹介編~

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